私たちはまだ見ぬその美しさを見てみたくて、混ざり合った美しいもの « Mélange(メランジュ) » と名付けました。
私たちが旅を通して出会ったアーティスト達の感性が交わった先には一体どんな世界が見えるのだろう。
そんな好奇心を辿って生まれた、作家との対話をお届けします。
第二弾 – herbal tea pot - Akari Karugane (pottey)×Murata Misa / Verseau (herb)
多治見で作陶する陶芸家の故金あかりさんと、植物療法をベースにしたハーブティーなどのプロダクトを生産するVerseau(ヴェルソー) 代表で植物表現者の村田美沙さんの対話によってできた、ハーブティーポット。
故金あかりさんのインタビューはこちら
村田美沙さんのインタビューはこちら
ハーブティーといえば、ティーバッグやポットにお湯を注いでで蒸して飲むものだと思っていました。フランスでハーブの勉強をしたという村田さんから、ハーブを煮出して飲む方法がありハーブの効果をより感じることができるというお話を伺い、ハーブティーを煮出す専用の素敵なティーポットで、ハーブを生活に取り入れられたらいいなと考えたのがはじまりでした。
自然のような柔らかさや美しさを感じる故金あかりさんの作品。柔軟なマインドを持ち、今まで見たことのない作品が生まれる予感をさせてくださる故金さんに、ぜひ作っていただきたいと思いました。
ミーティングを重ね、村田さんが故金さんの工房でハーブティーを実際に煮出しレクチャー。試作を繰り返し、包み込むようにおおらかでいて美しく、機能としても優れている素晴らしいハーブティーポットが誕生しました。
mont et plume(以下mp) 故金さんは村田さんからハーブを受け、どんなイメージをして制作されたのでしょうか?
Akari Karugane (以下K) 村田さんが持ってきてくださったハーブの袋を開けた瞬間に、香りがしっかり香って、中に入っているハーブの色がとても鮮やかで驚きました。ドライなのに、花の綺麗な色や、グリーンも綺麗に残っていて。そこで、ポットはこの綺麗なハーブティーが映えるような白系で作りたいと思い、白をベースにブルーやオレンジを少し混ぜたような色にしました。単調な白より、混ざり合った色が自然物(ハーブ)を合わせるのに合うかなと思ったのです。
mp) 可愛いデザインですが、機能面もよく考えられていますね。
K) 道具という点で、コンロに乗るサイズや、注ぎ口、安全性、など機能面には注意して作りました。金属の鍋のように取手を薄くすると陶器なので折れる心配があったので、全体的に厚めに作っています。少し重いですが、長く使えると思います。片口は以前から作っていたので、水切れが良いように気をつけています。右利き、左利き両方にも使えるように、注ぎ口は両側に作りました。
mp) ポットにあわせてカップも制作してくださりました。
K) カップは、カフェオレボールのような少し大きいサイズと小さい湯呑みサイズを作りました。少し大きなカップを両手で持ちながら飲む村田さんの姿が素敵だったので、この形もやってみたいと思い、カップ大も作りました。色は、ポットと合わせて白系にしました。ハーブティーを飲む時、このポットやカップと共にゆったりとした時間が過ごしていただけたらいいなと思います。
mp) 実際出来上がったポット、とてもいいですね!こんなに可愛い陶器の鍋は初めて見ました。
K) 焼いた作品を自分でも使ってみて、すごく嬉しくなりました。飲む前に煮出している時間も癒されるように感じて、とても良かったです。何度も試作をして、機能性に寄せるかデザインに寄せるか、取っ手は有ったほうがいいのか無いほうがいいか、取っ手が熱くなるので長さ・重さを工夫したり…機能面とのバランスをとりながら、作りたい形や色などもこだわって作ることができました。
Misa Murata(以下M) 厚みのあるフォルムに優しさを感じて、手にとって毎日お茶を淹れたくなるような気分になるポットだなあと思います。なにより普通の鍋より可愛い!故金さんのデザインの良さは、使った跡が重なっていくことで自分のものになっていくところだと思います。使うハーブによっては色がつきやすいものがあるので、その色合いも楽しんでみたいです。ヨーロッパの街や昔の絵本の中に出てきそうな雰囲気もありながら、和の食器にもあいそうです。
K) 村田さんが自然との関わりが多い方だと伺っていたので、そんな自然の綺麗さをお見せできたらいいなと思いました。自然物を美しいと思うように、釉薬が自然に混ざり合っているのが綺麗だなと思っていて、カップはひとつひとつ違う色味です。作家活動として、誰かをイメージして制作するのは初めてだったので面白かったです。
mp) このポットを使って、ハーブを生活に取り入れたいです。村田さん、どのように飲んだらよいでしょうか?
M) ハーブは朝に煮出すのがおすすめです。ポットから香りの良い湯気が出てきて、気分転換にも。蒸らす方法よりも時間がかかるので、朝ごはんをつくりながらゆっくり煮出してもらえたらいいと思います。
mp) 美味しくハーブを煮出す際のポイントを教えていただきたいです!
M) お湯からではなく、水から入れます。水をお鍋に注ぎ、ハーブを入れて沸騰するまで強火で熱し、ぐつぐつ沸騰しはじめたら弱火にし、ふつふつとするくらいの火加減で5〜10分煮出します。火を止めたら、茶葉は濾して飲みます。出来上がってすぐだと熱いので、少し冷ましてから飲んだほうが味わいもわかりやすくなります。
mp) 村田さんは普段どのように飲まれていますか?
M) 私は朝と日中に少しずつ飲んでいるので半日くらいハーブティーを楽しんでいます。朝、2〜3杯分を鍋でまとめて作って日中ちょびちょび飲んでいます。氷を入れたり、冷まして冷蔵庫に入れて飲んだり、作っておくと色々楽しむことができます。特に夏は冷えたものを飲んで体を冷やしがちなので、私はタンブラーで温かいものを持ち歩くうようにしています。分けて飲むという飲み方ができるのは、煮出すお茶のいいところですね。少しの量で作るよりは味わいも濃くなる気もがします。
mp)煮出したあとのハーブ、とても良い香りで捨てるのがもったいなくて…何かその先に使い道はありますか?
M)残ったハーブは手湯や足湯に使うのもいいですね。一度煮出しているので、効能といううよりは香りを楽しむ感じで使っていただくと良いと思います。
mp)故金さん、陶器の鍋を使ったことがない方も多いと思うのですが、気をつけた方が良いことはありますか?
K)陶器の鍋の良さは、保温性が高いことと、使いこむと変化し自分のものになっていくことです。一方で金属よりは匂いが滲みやすいので、ハーブティー用として使っていただくのが良いかと思います。陶器は熱を逃がさないので、金属の鍋と比べて吹きこぼれやすいです。沸騰すると一気に吹きこぼれるので、弱火で作ったり、陶器の鍋に慣れるまでは目を離さないようによく見ながら使って頂ければとも思います。例えばチャイを淹れるのもおいしそうですが、ミルクは吹きこぼれる可能性があるので早めに火を切ることをお勧めします。それから、使っていくうちに鍋の周りに貫入が入っていきますが、これは陶器の特徴の一つなので、安心してご使用下さい。
mp)このポットを使って、二人でハーブティーを淹れてみました。淹れている時間、ハーブの香りが部屋中に満ちて幸せな気分になったのと、美しいポットを大切に扱うことで一連の所作が美しくなるようで、とてもよい時間を過ごすことができました。村田さんをイメージして作られたポットが、皆の生活にも豊かな時間を運んできてくれるのでは、と想像してます。イベントでご紹介できるのが、今から楽しみです!
聞き手:mont et plume
Writing : Sayaka Yamamoto
写真:Sayaka Yamamoto