JOURNAL

【Interview】Misa Murata Verseau 代表 / 植物表現者 村田美沙さん

Verseau(ヴェルソー)を主宰し、近年ではハーブティの生産・販売だけでなくアーティスト活動(植物による表現)へと活動の幅を広げている村田美沙さん。私たちは村田さんのハーブティを飲んだことがきっかけでその存在を知り、ハーブティの美味しさはもちろんのこと、原料であるハーブ、そしてそのハーブが育まれる自然を自らの目で確かめ、繋がり、表現している村田さんの正直でクリエイティブな姿勢に共感しました。

今回(2022年7月)、私たちのイベントのテーマは “Origine”(日本語では “起源”  “ 源 ”)。村田さんの活動の源や、ハーブティの原料となるハーブについて、お話を伺いました。

ボタニカルブランド「Verseau」と、アーティスト活動としての植物表現

mont et plume(以下mp) :現在の村田さんの活動について教えてください。

村田(以下M): この一年で、活動内容がいろいろ変わってきました。最初に始めたのはVerseau(ヴェルソー)というボタニカルブランドで、植物療法をベースにしたプロダクト(ハーブティなど)を中心に生産し販売しています。「国産のハーブや生産者のことを伝えることや、植物療法の観点でハーブを生活に取り入れてもらうことで、使う人の体を整えることができるようになれるように」という思いを持って活動しています。もともと「Verseau」に自分のアイデンティティがたくさん盛り込まれていたのですが、これからは個人の活動としてさらに発信していけたらいいな、と昨年夏の終わりくらいから、「植物と人間の距離感を対話する」というテーマで作品を作り始めました。“植物表現”を行うアーティスト活動を行なっています。

mp)“植物表現”とは初めて聞きました。面白いネーミングですね。

M) 表現活動をしていく中で自然は切り離せないテーマだったので、そういう名前にしてみました。生産者に会いにいくために、都市ではなく自然に寄り添った生活をしている地域にいくことが多くなったことや、人の住んでいない山々に入っていくことが増えた時に、だんだん自分の五感で感じられるものも変わってきました。植物を見ていた目線が変わったことで、いつもと同じ東京のアスファルトでも以前は気に留めていなかった雑草が目に入るようになってきたり・・どこにいても植物と対話しているような感覚になってきて。そういうふうに自分に変化が現れたことが、さらに表現したいことへの原動力につながったのかなと思います。

 

自然は共通言語。植物とのコミュニケーションを深掘りしたい

mp)植物を見る目線が変わったとありますが、どのような変化があったのでしょうか。

M) 例えば、自分を追い込んでしまった時に植物や壮大な自然を見ると、自分の抱えているものなんてちっぽけだなと感じることってありますよね。自然に圧倒されて自分自身が小さく見える、そういうことに近い気がします。最近は、落ちて踏まれた葉っぱが面白いなあと思っていて、写真を撮ってアーカイブしています。葉脈や色合いなどの視覚的な美しさと同時に、人の痕跡を感じる。パッと見た目には美しいのに、悲しみやいろんな感情が見え隠れする。面白そうなヒントを感じて、実験的に溜め撮りしています。

mp) ハーブティだけの表現にとどまらず、植物を通した独自の視点を持っていらっしゃいますね。

M) 今までは植物療法やハーブティという方法で表現してきましたが、植物やハーブは一種のフィルターだと考えていて、表現する方法はなんでもやってみたいと思っています。文章や写真などの既存の伝達方法ではないコミュニケーションとしては、昨年、フランス人のアーティストと共に山の中で植物を採取しお茶を振る舞うパフォーマンスを行いました。自分と自然との距離感や、その中で生まれた感情、もやもやしているもの、環境の問題なども含めて、向き合い表現しました。既存の言葉やコミュニケーションで伝わらず分かり合えない世の中だからこそ、絶対に関わらなければいけない「自然」はある意味人間の共通言語だと思っているので、これはヒントになりそうだなと。植物とのコミュニケーションは、これからもっと深掘りしたいテーマです。


国産のハーブを。野菜を選ぶようにハーブを選べたらいいと思う

mp)Verseauの活動では、国産のハーブを使っていらっしゃいます。その魅力を教えてください。

M)フランスで勉強した後、東京でVerseauの活動を始める時に、自分がいいと思う原料を見つけるのに苦労したんです。フランスではマルシェや生産者を訪ねたことがあったので、日本でも実際に現場を見てみたいという思いがありました。そんな中、最初に出店したファーマーズマーケットである農家さんに出会い、農園を見学させていただくことになったのですが、実際に行ってみるととても愛情を持って育てていらっしゃる。当時はまだまだハーブを育てる人が少なかった中で、利益や効率の追求ではなく、これは愛情がないとできないことだと思い、その農家さん達の感情が素敵だな、一緒にできることがあったらいいなと思いました。当時ハーブは野菜に比べて単価が安くビジネスにするには難しいという現状がありましたが、自分はその需要を増やすことならできるかもしれない。色んな生産者の方々を巡って面白い出会いや発見があったのも魅力でした。

mp)今、美沙さんのハーブティ(Akeru)を飲んでいるのですが、本当に香りがいいですね!

M)香りや味わいって本当に一つ一つ違って面白いんです。ハーブって効能ばかりの選択肢になりがちじゃないですか?でも自分の感覚で選ぶと納得できるし、生活に取り入れたいっていう気持ちになると思うので、最初にVerseauを立ち上げた時に考えていたのは、「野菜を選ぶようにハーブを選べたらいいな」ということ。ハーブには色んな香りがあることを知らない方もいるので、好みの味わいのこれ!みたいに日常に気軽に取り入れられるようになれば、体幹が鍛えられて効果をより実感しやすくなるのでは・・と思っています。自分もハーブを知らなかった頃は、本当にこれが効くのか?と思ったりしましたが、それよりも美味しいな、飲みたいな、というのが勝っていきました。Verseauのハーブティは、そんな思いから毎日飲んでも負荷がかからないように気をつけて作っています。

今、新しいことをやりたいフェーズにワクワクドキドキしている

mp)今回のmont et plumeのイベントのテーマは “origine ”(日本語では “起源”  “ 源 ”)です。村田さんの現在の活動や考え方の源になっているものはありますか?

M) Verseauを始める前、ヨーロッパに渡り勉強する中で、その文化や考え方に影響され、自分も前向きになって活動を始めました。昨年行った表現活動では、当時フランスで出会ったアーティストと日本で再会して一緒に作品を作ったり、自分の生まれた土地である愛知県常滑で土器を制作したりと自分の20代を形作っていたものを集約してひとつの表現にすることができました。自分がハーブに出会ったこと、フランスに行ったこと、今までやってきたことが無ければこれらを繋げて形にすることはできなかったと思います。20代の集大成として形にできたことで、今は一周して空っぽの状態というか。たくさん表現したので、学んだり新しいことをやりたいフェーズにいる気がしています。例えばまたフランスでアーティストの人たちとコミュニケーションしてみたり、自然を訪ねて自分がどう変わるのか、見てみたい。自分の知らない場所、今だからこそ出会える人に会ってみたい。ワクワクもしているしドキドキしています。


《profile》
村田 美沙 (Misa Murata) |Verseau 代表|植物表現者
「人と植物の関係性」に着目。国内の薬草文化や生産背景を起点にフィールドワークを行い、国産の薬草を用いたフードプロダクト、ワークショップ、執筆活動、表現活動を行う。
2019年に立ち上げた、ボタニカルブランドのVerseau (ヴェルソー) では、素直なわたしになる」をコンセプトに自然と共に生きる「みらいの日常」を提案している。

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聞き手:mont et plume
Writing : Sayaka Yamamoto
Photo : Verseau 提供 、Daisuke Takashige