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【Interview】Fumiko Atsukawa Vol.2 陶芸家・厚川 文子さん 後編

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mont et plume(以下mp) いつも厚川さんにお話を伺っていると、美濃への愛情が伝わってきます。改めて美濃の魅力を教えていただけますでしょうか。

Fumiko Atsukawa(以下F) :多治見に来てから20年目になります。東京で3年間アパレルの仕事をした後、多治見市陶磁器意匠研究所に入ったのがきっかけで住みはじめました。美濃の魅力は、焼き物を通して本当にいろんな人がいることだと思います。偉大な人間国宝から世界的に活躍する若手作家、昔ながらの小さな製陶所や、ベルトコンベヤーが流れる大きな工場、土を掘っていらっしゃる方まで様々。日常生活の中で焼き物関係の方に出会うことも多く、そのつながりに驚きます。だから、「陶芸家です」って言っても変な目で見られず居心地がいいなあと思います(笑)。

陶芸に関しては、美濃では物も、知識も、自分が求めればいくらでも教えてもらえるし、道具も揃う。求めればこんなにいいところはないと思います。実は今年離れてしまうんですけど・・寂しいです。私は、美濃を第二の故郷だと思っています。

mp 今回、厚川さんのうつわがいろいろな土地や人の元へ旅に出ます。ご自身の旅の思い出を聞かせていただきたいです。

F:旅は大好きで、高校のときにアメリカのオレゴン州に留学をしました。その時に世界中から集まった留学生に出会ったことをきっかけに、もっといろんなものを見てみたいと思って、大学に入ってから数々の国へ旅をしました。インディアンに会いたくて、ニューメキシコのサンタフェに行ったり、草原で馬に乗りたくてモンゴルに行ったり。多治見に来てからは、死ぬ前に一度行きたかったインドにも行きました。

mp 旅の上級者ですね!世界中に好奇心をお持ちなのですね。

F:今までヨーロッパには全然興味がなかったのですが、主人がイタリアの陶芸の作家さんのところに5年くらい居たというご縁があって、そこに一緒に連れて行ってもらいました。その時に初めて、「ヨーロッパってすごいなあ」って感動しました。

mp:旅に出られるようになったら、行ってみたいところはありますか?

F アフリカが憧れの地ですね。マリに行ってみたいです。マリには土でできた教会があって、年に一度、そこに住んでいる人たちで補修作業をするそうです。それは誰でも参加できるらしくて・・・治安の面でなかなか行けなくなってしまいましたが、是非それに参加したいです。

mp 旅への情熱をずっとお持ちなのですね。厚川さんの作品は、組み合わせるものによってで異国のもののような雰囲気を纏います。もしかすると、厚川さんの旅の記憶が作品にも滲みでているのかもしれませんね。制作にも影響していますか?

F:今思うと、私はおそらく土着的な背景のあるものが好きなのかもしれません。デザイン的なものよりも、土着から生まれてきたかたちや、必然性があるものに憧れがあります。インディアンに会いたかったのも、彼らの土器がすごく素敵で興味を持ったからです。ニューメキシコのサンタフェにあるフォークアートミュージアムを訪れた時、とても感銘をうけました。彼らは自分たちの身近にあるもので、素敵なものをアートとも思わずにつくりだしていて。日本でいう民藝ですね。素朴だけど、表現したいという気持ちが溢れ出ていて、格好よかった。ああいうものにすごくときめきます。

mp 今回の「旅するうつわプロジェクト」では、厚川さんのうつわが旅に出ます。

F:作品を世界中の人のところに少しずつステイさせて使ってもらって・・ということが楽しそうだと思ったし、それが見られたら面白いだろうなと思いました。旅先で色んな方に使ってもらうことに、緊張してもいます。(笑)

mp 良い旅になるよう祈りましょう!

前回の記事はこちら→InterviewFumiko Atsukawa Vol.1 陶芸家・厚川 文子さん 前編

 

厚川 文子 / 陶芸家

Fumiko Atsukawa / potter

埼玉県出身。多治見市意匠研究所卒業後

岐阜県多治見市で作陶を続ける。