JOURNAL

【people / interview】フラワーアーティスト・守屋百合香さん

人と共にうつわが育つように、その人とものの間にはパーソナルなストーリーがあります。people / interviewでは、旅するpotteryにご参加いただいた方の「大切にしているもの」についてお話を伺います。


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私たちモンテプリュム2人の大切な友人であり、パリと東京を拠点にフラワーアーティストとして活動をされている守屋百合香さん。
うっとりするほど美しいアンティークや花器の販売もされている百合香さんに、手放せずに大切にしているアンティークと、どのようにその審美眼を磨かれたのかを伺いました。

新たな時を刻んでいくアンティークのトランク

mont et plume (以下mp) フラワーアーティストの活動の他にアンティークのセレクト販売もされている百合香さんですが、ずっと手放せずにいる大切なアンティークはありますか?

Yurika Moriya (以下Yurika) 2019年に蚤の市で購入したトランクです。アンティーク特有の焼けたような、くすんだ白の色合いに惹かれてインテリア兼収納用に購入しました。買った当初は生活感の出る雑多な荷物をしまっていましたが、子どもが生まれてからはおむつや常備薬などを収納しています。
子どもがこのトランクでつかまり立ちをして、つたい歩きをして、このトランクの上に乗って遊ぶようになって、今は一生懸命に鍵を開けようとしていて、成長を感じています。
お客さんが来た時にはクロスをかけてローテーブルとしても使えて、このトランクの周りに大切な人たちがいる風景、思い出が年々増えていって、手放せない大切なものになっています。

mp) アンティークのトランクがさらに歴史を重ねていっているのが、素敵ですね。
お子さんが生まれてから、益々パリの生活を楽しんでいらっしゃいますね!いま百合香さんの暮らしの中での楽しみは何でしょうか?

Yurika) やっぱり部屋にお花を飾ることですね。今は子どもができたこともあり前より自由な時間がないからこそ、お花を生ける時に、あなたはここが居心地いいよね、って花と対話しながら飾っているその時間がとっても楽しくて。
お花って目をかけないといけないものだから、飾った場所を自然と綺麗に保つようになって、そこがお気に入りスペースになっています。花に合わせて花瓶を選んでみたり、それに合わせて周りのディスプレイを変えたり。
お花もアンティークも好きなものだからこそお手入れをするし、その過程で愛着が湧いて、大切なものになっていっている気がします。

“自分の感性に正直にものを選びたい”

mp) 独自の目線でセレクトされている印象ですが、たくさんものが並んだ蚤の市の中からものを選ぶときの基準のようなものはありますか?

Yurika) ブロカントって雑多に大量のものが置かれているので、最初のうちは一つ一つのものとして目に入ってきませんでした。でも何度も行って好きなものを選んでいく中で、自分が何を好きなのか見極められるようになってきて、自分の軸ができてきたように感じます。
私の場合は、人の意見が刺激になって面白い時もたまにはあるのですが、人から見た自分のイメージや世間ではこれがいいと言われているから選ぶのではなく、その時その時ピンときたものを正直に選ぶようにしています。自分の感性に正直になって、一つひとつ自分の好きなものを選択したいと思っています。

mp) 選ぶことに対して、日々真剣にそういう気持ちと向き合っているのですね。素敵なものをセレクトする百合香さんにどうやったらセンス磨けるのかって近道を聞きたくもなりますが、そこに努力があることを忘れてはいけないと言うか。

Yurika) 面白いのが、そうやってものを選んでいると、自分の好みの軸がはっきりしてきたのと同時に、幅がでてきたことにも気づいたりします。
これまでの私はアンティーク感の強いもの、エレガントで繊細なものが好きだったけど、いまはそれだけでなく、個性的でシュールなものも好きだなぁと感じるようになってきて。

mp) シュールなもの!例えばどんなものですか?

Yurika) 影やユーモアのあるものですかね。例えば、ASTIER de VILLATTEのあのちょっと奇妙な絵も含めて好きだったり、少し怖いようなシャガールの絵にも惹かれたり。
綺麗なだけじゃなくて、アクセントとしてちょっと面白い要素があるのが好きだなぁと思っていて、それはアンティークだけでなく、お花の仕事にもいい影響になっているなって思います。実際にきりんのオブジェはそういうところに惹かれて購入しました。

蚤の市ではアフリカンなお店に置かれていて今までだと素通りしていたんですが、気になって思い切って購入したら、意外に家のディスプレイにマッチして可愛かったです。
最近新たに購入したユニコーンのアンティークプレートも、この柔らかな色彩と、ユーモラスでシュールなタッチのギャップが気に入っています。

mp) 確かに、そういう意外なものが入っているから、百合香さんの世界観に独自性を感じるのかも。百合香さんはフランス映画とか文学にも詳しいので、そういった綺麗なだけではない世界により奥深さ、人間らしさを感じて惹かれているのかもしれないですね。

《profile》
Yurika Moriya(守屋百合香)
フラワーアーティスト
パリと東京を拠点に活躍し、パリコレの装花から撮影スタイリング、コラム執筆を行う。
自身のOnline Shop にてアンティーク雑貨、花器も販売中。

旅するpotteryプロジェクト
自由に旅ができなくなった時代だからこそ、旅する夢をうつわに託したい。旅するpotteryプロジェクトでは、世界中の使い手が参加者となってうつわをバトンし、産地から世界へ、作家から使う人へ旅を通してその変化と物語を一緒に見守ります。

聞き手・mont et plume
Text・Ikumi Hane
Photo・Yurika Moriya