JOURNAL

【people / interview】 Buntaro Miyata (uRn. chAi & TeA director)

2021年の9月にチャイやお茶が飲める店舗を恵比寿に構えたuRn.chAi&TeA(アーンチャイアンドティー)。ここでいただくチャイやお茶の美味しさはもちろんのこと、温かくほっとするような空間やサービス、こだわりを感じられる内装やプロダクト、すべてを通して心地よい時間と世界観を味わえる、私たちも大好きなお店です。ファッションの世界を経て、このuRn.chAi&TeAのディレクターを務めるMiyata Buntaroさん。そのお人柄とセンスの良さにすっかり私たちもファンになってしまったBuntaroさんに、お店と大切にされているものについて、お話を伺いました。

いつ来てもらってもあったかい場所に

mont et plume(以下mp)  もともとファッションの業界にいらっしゃったBuntaroさんがuRn. chAi & TeA (以下uRn.) をオープンされた経緯を教えてください。

Buntaro (以下B) 以前から飲食店をやってみたいと思っていたんです。長くファッションの世界にいると、どうしてもレディス、メンズなど、お客様をカテゴライズする必要がありました。でも今の時代、色々な生き方や考え方を持つ人がいる。もっといろんな人と関わりたいなという思いが大きくなった時に、「飲食」だとそういったカテゴライズの壁を乗り越えられるのではと思ったんです。

mp) コーヒーではなくチャイやお茶のお店というのは珍しいですね。

B) 僕、実はコーヒーが飲めなくて。北海道時代の友達がサンフランシスコに行った時にコーヒーを出さずにお茶を出すお店があったと言っていたのを思い出したんです。コーヒーが飲めない人にも選択肢があって欲しい。そんな中で、チャイは本格的なお店でしか飲めないなと思ったことが今につながっています。

mp)uRn.に込められた想いを教えてください。

B) uRnは壺という意味です。水がたまると瓶(道具)として使える一方、美術品として愛でることもできる、という二つの側面があります。同じように、人にも多様な側面があると思います。一人でいる自分や、誰かと自分、というふうに。多様な自分自身と向き合い、自分らしさを引き出せるティーショップにしたいという想いを込めました。お店を構えるにあたっては、カッコよくてクールな感じというよりは、いつ来てもらってもあったかい場所になることをめざしました。そんな雰囲気を目指して家具も特別に作ってもらいました。お店には常にお花を飾っているのですが、これも誰かを家に招いた時に、その人たちが緊張しないように、心が和むようにと気遣う気持ちと同じ考えからです。そういうふうに、日常で大切にしていることをお店でも体現できたらなという想いがあります。

この世にあるものすべてに理由があってほしい

mp) 何度かミーティングでお話を伺う中で、ご自身の言葉で、思いや考え・世界観を伝えてくださることがあり私たちも心を動かされました。いつもそんなふうに言葉で伝えていらっしゃるのですか?

B) ファッションの世界では販売の経験もしました。その時に毎シーズン数々のコレクションが生まれる中で、「語れるもの」じゃないと、なんとなくスルーされて、なんとなくセールになっていく。そんな風にしたくないなと思っていました。「この世にあるものすべてに理由があって欲しい」と思うんですよね。だから、自分が携わるものには全部を言語化して、ものに理由を与えたいと思っています。拙くてもいいから、言語化するということが大事だと思っています。

mp) uRn. chAi & TeAの随所にも、その思いは存分に詰まっていると思いました。そんなBuntaroさんが大切にしているものについて、教えてください。

大切にしているもの

●オリジナルエプロン(uRn. chAi & TeA オリジナル)

B) お店でスタッフも着用している、オリジナルのエプロンです。コロナ禍で、家でコーヒーやお茶をする時間や、きちんとエプロンを着て料理をする日常って豊かだな、と気がついた人も多いんじゃないかな。そんな想いを持ってお店で着用するエプロンをスタッフみんなで着用しています。同じ方向を向いている人と一緒に作りたくて、地元の友人がデザインチームにいるURU というブランドに制作をお願いしました。

mp) 可愛いです!デザインも普通のエプロンとは一味違うような・・?

B) 「深く真ん中にスリットを入れることで、足を動きやすくすることができる」「首の後ろストラップを2重にすることで負荷を分散し、エプロンの重さを感じにくくすること」にこだわりました。アンティークリネンみたいな風合いで、昔ながらのストライプの素材も気に入っています。バッグが付いているので、スタッフのみんなが休憩にも持っていけます。

●安藤雅信さんのお皿

B)  僕が初任給で買った安藤雅信さんのうつわです。当時地元の北海道で働いていたセレクトショップによく来てくださったお客様が素敵なお店をされていて。そのお店で銀色の器がオブジェのように見えて素敵だなと思って買いました。パスタやカレーなど、何でもたっぷり入るサイズ感でよく使いました。いまも欠けることもなく大切に使っています。

mp)初任給で安藤さんのお皿を選ばれたんですか!器がお好きだったんですね。

B) 夏になると、北海道にある実家にいろんな作家さんがサマーハウスとして滞在されていたんです。黒田泰三さんにいただいた器なんかもいっぱいあって。器は身近にあった存在なのかもしれません。

●マルタン・マルジェラのGジャン

B) 高校時代、イタリアに住んでいた時に買ったマルジェラのGジャンです。うちの家庭は少し変わっていて、中学を卒業したら高校に行かずに海外に行きなさいという教育方針で。中学を卒業後、ミラノの上のコモという街に留学して、ファッションの課程のある高校で勉強をしていました。

mp) お若い時に海外を経験されたのですね!このGジャン、裏がヴィンテージのブリーチデニムのようでとても可愛いです・・!

B) 変わったデザインですよね。多分リーバイスか何かのリメイクだと思います。実はイタリア時代は言葉も通じないしけっこう孤独で。その後ディプロマをもらって日本でファッションビジネスの学校に通うことに決め、「日本に帰ったら友達をたくさん作ろう」と、入学式にスーツじゃなくてこのGジャンを着ました。変な服だなと思って友達になれたら・・と。結果、友達がいっぱいできて、今でもその時に出会った友人は一番仲の良い友達のひとりです。

「この世にあるすべてのものに理由があって欲しい」というBuntaro さんの言葉の通り、お店や大切にされているものすべてに温かいストーリーがありました。そんな温かい時間を過ごしに、また私たちもuRn.chAi&TeAに通ってしまいそうです。

《profile》
Buntaro Miyata (宮田文太郎)
北海道出身。永くファッションに携わり、ブランドのコンサルティング、セールス、PRなどを行う。2019年uRn.chAi&TeA(アーン チャイアンドティー)をスタート。ケータリングから始め2021年に恵比寿に店舗をオープン。
https://urn-jp.com/

Interview: mont et plume
text: Sayaka Yamamoto
Photo: uRn.chAi&TeA 提供(1~4枚目)、Sayaka Yamamoto( 5,6枚目)