mont et plume(以下m)セレクトショップ「山の花」ではどのように作家や作品を選ばれているのですか?
Kazuya Hanayama(以下K)まずは東濃の作家であること。お店で扱わせていただく時には、自分がいいと思う人の作品を置いています。もうひとつは、売れそうなものを集めるというよりも、その作品を見てもらう幅を広げたいという考え方です。東濃の焼きものには、オブジェや量産、個人作家がいて・・・と広い幅があるので、お客様にも見てもらえる幅を広げたいと思っています。人としての好きさも含めて、その人の作品を幅広く扱っていたりします。
(ほとんどの作品は常設で、いつも東濃の作家の作品に出会うことができる)
K)選ぶ基準は、“やきものを愛し、やきものに魅了された人がつくる”こと、“100年前も100年後も美しいと思えるか” ですね。作品自体にも作家自身にも長く続いて欲しい、という作品を扱っています。作家さんが変わっていくこともあるし、時代が変わって相対的に活動や作品が変わって見えることもあると思っています。
m)まさに私たちも、花山さんと「山の花」に出会って、さらにこの土地の焼き物や作家さんへの興味が深まりました。今後お店もどのように成長していくのか、楽しみです。
K)理想は、「東濃で生まれている焼き物・もしくは東濃で起きているであろうことを表現できたらいいな」と思っています。まだ自分の店だけでは表現しきれませんが、大きな目でみると多治見に陶器を買いに来る方、陶芸家になりたい人、バイヤーさんや他の地域でお店している方たちなど売る方に関わっている方にとっての入り口になりたいと思います。たとえば就職窓口や不動産のように、この土地で頼られる存在になれたらいいなと。今もおしゃれな店だなと思って来てくれる人、町おこし文脈で来てくれる人、うつわが好きな人・・と、少しずついろんな人が接点を持ってくれる場所へと成長している気がします。
(多治見市陶磁器意匠研究所に在籍しながらすでにその作品のファンも多い故金あかりさんの作品)
m)多治見には焼き物の学校があり、作家を目指して活動されている学生さんにとって山の花さんの存在は心強いように感じます。学生さんに対してメッセージはありますか?
K)メッセージは特になくて、学生というフィルターもあまり気にしていません。むしろ僕より若い世代の彼らが何を考えているのかが気になるし、きっと彼らがやっていることが正しいと思うんですよね。彼らがやりたいことに対して僕に役割があるのなら、一緒にやりたいと思っています。関わりしろがあったら、そこからどうなっていくのか、すごく楽しみです。
K)産地にいてマネジメントをするからこそできることがあると思っています。実は作家が孤独になって辞めていく、という例も少なくありません。作家が辞める理由は金銭的な問題とモチベーションの問題があると思います。僕はモチベーションの点では関わりしろがあると思っていて、コミュニケーションを取ったり飲みにいったり。関わりの中に居られる作家がここで残っていけるんじゃないかなと思います。
(ビルの屋上からは多治見を見渡すことができる)
m)今回、「旅するpottery」というプロジェクトを行います。花山さんご自身の旅に関するエピソードはありますか?
K)実は僕、乗り物が苦手で。なので、動機がないと旅に行かないんです。電車では(酔うので)携帯が使えないし、寝ても起きたら気持ち悪いので、目の前を見つめて起きておかなければいけない(笑) だから仕事とか行きたい場所がないと行かないんです。
m)なんと!意外な事実です(笑)
K)方向音痴なんです。移動したなという感覚より、「今ここにいる」という感覚が大きいので、どこでもそれなりに楽しんでいます。僕の興味軸は焼き物なので、焼き物があれば誰とでも話せるし、焼き物があれば、どこにでも行ける。例えば、チベットのお店が器を持ってきてきてよといわれたら、持っていくかもしれない(笑)
m)焼き物が関わったら旅も行けちゃうんですね? やっぱりちゃんと、花山さんも変な人なんですよね(笑)
(ビルのそばを流れる土岐川。水鳥が川に潜る様子など日常に気づきがあるという。)
m)最後に、ご自身が使命と感じていらっしゃることはありますか?
K)「余計な山を作るのが派手で目立つけど、社会的にニーズに対して、穴を埋めることが仕事である」、というような概念を養老孟司さんの書籍で読み、共感しました。
自身の使命とか夢というよりも、自分は「役割至上主義者」だと思います。焼き物にハマって、お店だけでなく、幅広く、大小関係なく求められた役をこなす。新町ビルをつくったのは、役割を自分でつくったということだと思います。
あとから自分の役割に気づくこともあります。だから、焼き物がよくなるなら、なんでもやります。ほんとに。(笑)
mont et plume の活動をスタートするまでに何度も花山さんにお話を伺う中で、「関わりしろ」を大切にされる姿勢から、産地にいるからこそできることの可能性を教えていただいたように感じます。ここで出会える東濃のやきものの今、これからも楽しみにしています。
(取材は2020年12月に行いました)
<profile>
花山 和也 Kazuya Hanayama
株式会社新町 代表取締役 /「山の花」オーナー
新町ビル https://www.shinmachi-bldg.com/
山の花 https://yama-no-hana.com/
岐阜県多治見市新町 1-2-8
聞き手:mont et plume
Writing / Photo : Sayaka Yamamoto