JOURNAL

【Interview】Kazuya Hanayama Vol.1「山の花」オーナー 花山和也さん 前編

焼き物の街、岐阜県多治見市に「新町ビル」というユニークな場所があります。古い空きビルを改装し、2019年にオープンしたというその複合ビルは、多治見をはじめとする若い地元の作家や文化の発信地となっています。

今回お話を伺ったのは、この新町ビルを手がけ、その2階に東濃(美濃地方東部)で作られる焼き物を販売する器のセレクトショップ「山の花」を営む花山和也さんです。

花山さんに初めてお会いしたのは、私たちがmont et plume の活動を考え始めた2020年秋。二人でこのビルを訪れ、プロジェクトをスタートするまでのあいだ何度もお話を伺ったり相談したりさせていただきました。

対話を通じて、私たちは美濃の焼き物の魅力を知ると同時に、花山さんご自身が産地に身を置き「場」を作ることで、作り手も使い手も色々な人がつながるコミュニテイが生まれているように感じました。何よりこの場で焼き物に関わっている方々が生き生きとされている姿を見て、私たちはこの土地の可能性を確信しました。

古いビルから意味のある場所へと変化した「新町ビル」


(株式会社新町 代表取締役、「山の花」オーナー 花山和也さん)

mont et plume (以下m) まずは、「新町ビル」について教えてください。多治見の中でもユニークな存在という印象です。

Kazuya Hanayama (以下K) 「新町ビル」をほかの組織に例えるのは難しいんですよね・・。築50年の空きビルだった新町ビルディングを改装して、運営と貸し出しをしています。組織の在り方はどうするか、どうしたら一番面白くなるか、をはじめに考えてスタートしました。

m)うつわや作家の紹介だけでなく、店内外でのイベント開催や外部への関わりなど(ホテルなど)、幅広く地域と関わりを持っていらっしゃいますね。

(名古屋の稲熊家具製作所による木の表情が美しいキッチン。訪れた時に開催されていた、お茶のイベントの様子。)

K)お店としては、「器を売る」「作家との関わり・サポート」以上に、共存していくためのチーム形態をよく考えています。実は立ち上げ時はもっとシンプルに考えていて、「古いビルを改装して、焼き物を売っているビル」で説明は十分でした。しかし運営していく上で予期せぬ出会いや、逆にお声がけをいただくことが多くなり、ビジネスライクで数字を出すという事業計画とは、違う方向へ。
既存の枠には当てはまらないやり方を模索していくことになりました。勿論大変なこともありますが、思い描いていたものよりも密度が濃くて面白い。YES or NOでは判断ができないことが初年度から起きています。


(4階のギャラリーショップ 「地想」)


(新町ビルのファウンダー、「地想」オーナーの水野雅文さん)

m)確かに、私たちが訪れた数回の間にも、異業種のPOPUPやイベント、展示など毎回新しい取り組みがあり面白い場所だなあと。

K)目の前で起きることやイベントに来てくださった人との中で、話して、これやれますね、ここ使えますね、と有機的に新しい取り組みが始まることが多いです。
場所がそういう性質になって、意味のある場所に育ってきたように感じます。1階にイベントスペースを設けたことで、いろんな方と関わりが持てる場になっていきました。

 

焼き物に魅せられ、気づいたら移住していた

m)花山さんは多治見のご出身ではないと伺いましたが、この場所に拠点を持ち活動される理由を教えてください。

K)出身は名古屋です。縁があり陶芸家のアシスタントをはじめ、東濃地域の同世代の作家と仲良くなっていくうちに、気が付いたら住んでいました(のちに、自分が移住したと気づく)。希望を持ってここに来たわけではなく、どんどん好きになって今に至りました。

m)もともと陶芸をされていたのですか?

K)いいえ、もともとは家業で経理・事務など経営の基礎となるような仕事をしていました。多治見で作陶されている先輩の工房へ遊びにいった際に陶芸にハマり、今までやっていた仕事の概念が180度変わりました。そして焼き物に魅せられ、自身は作り手側ではなく、売り手やマネジメント側の役割として現在の道に繋がっています。


(花山さんが作家や作品について自分の言葉で説明してくださるのもお店の魅力)

 

東濃の魅力は、人の魅力だと思う

m)「山の花」では、東濃の作家を紹介されています。東濃の魅力は何だと思いますか?

K)焼き物に携わる人の数、歴史、その上で人と焼き物の魅力があると思います。僕たちの上の世代にスーパースターみたいな人をたくさん輩出していますし、焼き物や作家のクオリティがもともと高いということはあとになって気がつきましたが、他の地域と比べてみても密度が濃いと感じます。

K)良い焼き物は世界中にいっぱいありますが、人の魅力が、ここにいる一番の理由かもしれません。作家って(誤解を恐れずに言うと)変な人が多いんです。でもピュアでやりたいことがあって、うまくいかないことがあって、真面目に努力もしていて・・・と、人間味があります。

 

後編へつづく

(取材は2020年12月に行いました)

 

<profile>
花山 和也 Kazuya Hanayama
株式会社新町 代表取締役  /「山の花」オーナー

新町ビル https://www.shinmachi-bldg.com/
山の花  https://yama-no-hana.com/
岐阜県多治見市新町 1-2-8

聞き手:mont et plume (Ikumi Hane, Sayaka Yamamoto)
Writing / Photo : Sayaka Yamamoto