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【Interview】Takumi Kudo Vol.2 職人 / 陶芸家・工藤 工さん 後編

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mp:古典的な花や鳥の柄を描かれるお父様の作品に比べて、工藤さんの絵は抽象的ですね。今までご自身の作陶に影響を受けたものがあれば教えてください。

T:絵描きの父の影響で、シャガールやピカソなど色々な作家の作品を見ましたが、その中でもミロの作品に影響を一番受けたかもしれません。オブジェという考え方も芽生えていました。その後も色々な出会いがあって、現在の作風に結びつきました。今では、うつわを前に筆をとると勝手に手が動いてしまいます。

Mp:アートに影響されたということですが、「作家」として活動しようと思われなかったのですか?

T:陶芸家の道に進むということも頭に浮かびましたが、ここ(駄知)はメーカーの町で。周りの人も付き合う人もメーカーの人という環境の中で、自分で「作家」というのはおこがましくて気軽に名乗るものではないという意識が昔から染み付いていました。私にとって、陶芸家とはアーティストという認識で、自身で名乗ることには今でも抵抗があります。

mp:では工藤さんは、ご自身のことをどのように考えていらっしゃるのでしょうか?

T:職人か作家で言うと、私は職人だというスタンスでやってきました。でも最近、妻とも話し合って結論をつけたのが、65歳になったら陶芸家になるというのを目標にしようと。それまでは南窯さんで陶芸家を目指して修行させてもらっている、というのが今の自分の考えです。

奥様:作家と職人という二つの道があった中で、「職人です」と答える姿勢には、まずは家族のために、生活のために、職人として長いこと南窯を支えてきた姿勢が表れていると私は理解しています。今、職人としての道を極めている最中で、それを極めきるのが65歳。これを節目に作家として活動していくというふうに彼の人生を私は解釈しています。日々、自分の技術や知識の向上を目指して職人としての自分の幅を広げるために努力している姿を見ているので

 

mp:奥様の理解と、二人三脚の日々の仕事が、今の南窯さんのベースにあるのですね。

T:この仕事は30年ほど続いていますが、日々飽きません。休みの日も工場(こうば)にいて、釉薬の研究をしたり、作りたいものを作っています。ある意味、作家部分は趣味ともいえるかもしれません。現在は、目標に向けて、南窯としての活動を続けながら、作家としても活動の幅を広げているところです。

mp:今回のプロジェクトではどちらの姿勢で取り組んでくださっているのですか?

T65歳までに作家活動を増やしていきたいという思いで、今回は作家の意識で制作しています。

mp 今回、工藤さんのうつわが東京やパリで旅に出ます。

T:うつわが旅をするというのがロマンがあって良いですね。以前、イギリスのガーデナーの方がガーデニングのイベントで来日されて、植木鉢を使って下さったことがあります。今でもロンドンで使ってもらっているのかなと想像することがあるのすがそんなふうにいろんなところで使われていることを想像するのは楽しみですね。

mp 旅はお好きですか?

T:なかなか自由に旅ができないというのが職人の定めですかね・・。職人としてうつわを作って子供を育てるということは、(仕事・家庭共に)長くその場を離れられないということで、先日も、妻と2人で、これから(展示に)行ける距離についても話し合いました。

mp なるほど・・。今回、工藤さんの代わりにうつわが旅をすることで、その旅を一緒に見守れると私たちも嬉しいです。

 

工藤工  / 職人(南窯) / 陶芸家

Takumi Kudo / artisan / potter

岐阜県土岐市駄知町に工場を構える南窯の2代目。

美濃焼の技法を引き継ぎながらも、

美しく軽快な絵付けをはじめとする自身の新たな作品を生み出している。