JOURNAL

【Interview】Takumi Kudo Vol.1 職人 / 陶芸家・工藤 工さん 前編

岐阜県の東濃に位置する駄知(だち)に窯を構える「南窯(みなみがま)」。南窯の2代目として、時代の変化を受けながらも手づくりと絵付けのルーツを進化させて柔軟に変化できる強さが、今の南窯さんを作っています。工藤 工(くどう たくみ)さんにインタビューを行いました。

mont et plume(以下mp) 今回のプロジェクトで、私たちはこの地域を代表する焼き物を工藤さんの視点で制作してただきたいという思いがあり、アトリエで何度か打ち合わせをさせていただきました。その中で、工藤さんの作られる御深井焼(おふけやき)の淡く繊細な色合いに一目惚れして、これから旅をするどの地域の方でも使いやすいように、鉢の形で制作をお願いさせていただきました。こちらのうつわについて詳しく教えていただけないでしょうか。

Takumi Kudo(以下T : はい、御深井焼きとは、美濃焼の15品目の一つで、名古屋城周辺の深井丸という地域からきている流派です。志野焼や織部焼など華やかなお茶道具が流行った後にうまれた華美でない焼き物です。いわゆる、わびさびの感じですね。この地域でも大切にされてきた焼き物です。

mp:華美でないというこのうつわは、どんなものでも受け止められるように私たちには映りました。使う人の生活によっていろんな表情を見せてくれそうだなぁと。

mp:(実際にろくろを回す様子を見せていただく)一つ一つにろくろの指使いが伝わってくるようですね。

T:ろくろに指の跡が残るような「ろくろ目」が無い方が好みだという方も増えてきたのですが、私はろくろで回したということが分かるように残しておきたいんですよね。

 

mp: 工藤さんは南窯の2代目でいらっしゃいます。南窯について教えてください。

T: 南窯が誕生したのは昭和47年です。実は、それまで家業は魚屋でした。画家を目指していた先代(工藤陸雄さん・工さんのお父様)が家業を継がずに絵描きをする傍ら、赤絵付けの工房で南窯の前身となる小松陶苑を開業したのがスタートです。初期の南窯は上絵付けの仕事がメインで、父の絵付けは評判でした。

mp: 一つ一つ手作りの痕跡を感じる絵付けのうつわが、南窯の魅力だと感じています。当時から、今と同じような制作方法をとられていたのですか?

T:いいえ、昔から絵付けは行っていましたが、最初は機械ろくろで黄瀬戸・織部・粘土の量産を行っていました。バブルの頃までは好調でしたが、バブル崩壊後、発注数は減少して・・。他に真似のできないものを作るために、持っている技術を生かして「手作りでつくる」というのが、今の南窯のルーツにもなっています。

 奥様:バブルが崩壊し、器のニーズはこれまでの主要なお取引先だった割烹や業務用から、ご家庭で使うことにシフトして行ったんですね。私たちも試行錯誤して、舵を切り直してきました。そうしている中で新たなご縁が生まれて、昔とは異なる視点で南窯のうつわを届けられる機会が巡ってきました。今では食器を扱うセレクトショップの方がわざわざ南窯が良いと言ってここまで来てくださるようにまでになり、お付き合いが続いています。

mp:工藤さんのルーツについても知りたいです。最初から陶芸の道を目指していらっしゃったのですか?

T:いいえ、実は全く目指していなくて。当時はDCブランドブームだったので、ファッションに関わる仕事がいいと服飾系の学校で学んだ後アパレルの仕事に就きました。そんな中、バブル期で南窯が軌道に乗っていた時に、父から「ここでも大きな仕事ができる。この先お前はどうする?」と諭されたことをきっかけに、新たな視点を得て職人の道へ進むことに決めました。

(写真はお父様の作品)

 奥様:そうと決まったら、お父様を中心に作家さんや陶器に携わる方々が総出で工さんをどんな職人に育てていくか?と考えるプロジェクトが始まりました。

 mp:皆さん、工藤さんが職人の道に進まれることをとっても喜んでいらっしゃったんですね!

T:でも私も若かったので、当時は「地味な焼き物にファッションのようなデザインを・・」とか生意気なことを言っていたのですが、諸先輩方から鼻っ柱をたくさん折られました。そんな中、デザインを学びたいなら、と紹介してもらった意匠研究所に入学して、学校で学びながら同時に南窯で修行を始めました。

mp:最初から今の作風で始められたわけではなかったのですね。工藤さんがご自身の作風を表現されるようになったきっかけはありますか?

T:リーマンショックあたりに、お父さんが仕事を辞めると言って。当時のお客様のニーズは、「お父さんの書いた絵」でしたが、自分は同じようには描けない。そんな時、あるお客様に「下手でもええから、あんたが書き」と背中を押されて、やってみたんです。お父さんの作風とは違う自分の絵を描いてみたら、それが意外と受け入れてもらえました。これをきっかけに自分のオリジナルでの道を歩み始めました。

(後編に続く)

 

 

工藤工  / 職人(南窯) / 陶芸家

Takumi Kudo / artisan / potter

岐阜県土岐市駄知町に工場を構える南窯の2代目。

美濃焼の技法を引き継ぎながらも、

美しく軽快な絵付けをはじめとする自身の新たな作品を生み出している。