JOURNAL

【Interview】Parklet ファウンダー / クリエイティブディレクター Max Houtzager

今回のイベント会場となるParklet(パークレット)は、日本で本当においしいサワードウブレッドの店を作りたいとファウンダーのMax Houtzager(マックス・ハウゼガ)さんを始めとする多国籍なチームが2022年1月にオープンしたベーカリーカフェ。公園に隣接した心地よい空間で、本場サンフランシスコで人気を誇るベーカリー「Tartine Bakery」 の経営に関わったケイトさんとカリフォルニアキュイジーヌを確立した名店「Chez Panisse」で経験を詰んだジェイジェイさんが監修した本格的な天然酵母のパンをいただくことができ、すでに地元からだけでなく海外からもファンが訪れる場所として、日本橋の土地に新たなカルチャーをもたらしています。

私たちが初めてMaxさんにお会いしたのは、2021年に開催したmont_et_plumeのイベントにて。Parkletのオープンに向けて故金あかりさんの大きな壺をお探しでした。オープンしたお店を訪れると、そこには美味しいパン、公園につながる心地よい空間、楽しそうなお客様とスタッフ、そして故金さんの作品をはじめ、うつわやアートが見事に関わり合った世界が広がり、何と幸せな場所なのだろうと感動したのを覚えています。

photo: Max Houzager

mont_et_plume (以下m) Parkletはどんな場所ですか?

Max Houtzager (以下Max)「公園」が朝から夜まで誰にでもオープンなパブリックスペースであるように、Parkletも毎日営業しています。サワードウブレッドがベースのベーカリーカフェですが、パンを焼いているだけではなく、隣接している公園と一体感を感じながら、色々な使い方ができる空間です。まずは店内で食事ができるカフェ・レストランとして、そしてグローサリーという機能や、併設する堀留画廊でのアート鑑賞、ゆったり1人で楽しみたい人も、数人でテーブルを囲みたい人も、目的や座る場所によって全く違う体験をしてもらえると思います。立ち上げ初期の段階から、カフェのお客様じゃなくてもみんなが集まれるような場所になったらいいなと考えていて、個人的には地元(サンフランシスコ)でお惣菜を買って家に帰る前にちょっと一服できるみたいなスペースがずっと好きだったので、そういう役割も担えたらいいなと。公園のように自由な使い方ができることでお客様にとっての体験に変化が生まれるようにしています。今後は夜も営業する予定で、世界観がもっと多様に広がっていくといいなと思います。

m ) お店をオープンされたのが2022年ですね。1年経って変わったことはありますか?

Max ) 1年が経ちスタッフの安定感も生まれ余裕が出て来たことで、最近は少しずつイベントを企画できるようになってきました。直近ではメキシコ料理で僕が一番だと思うシェフを招いてイベントを開催しました。こういったイベントを行うことで、海外のアーティストやさまざまなコミュニティとParkletが繋がり、色々な人が集まる場所、ダイバーシティのある交流が生まれる場所にしていきたいと思っています。

photo: Max Houzager

m ) お店を運営する上で大切にされていることは何ですか?

Max ) 今も変わらず大切にしているのは、「街の色」です。実は、海外からのお客様がParkletに来て、「すごく東京らしいね」と言ってくださることがよくあるんです。それは、公園がその地域に馴染んでいるように、Parkletも日本橋らしさ、東京らしさ、日本らしさをもちつつ、カリフォルニアのベーカリーカフェらしさを持っているからだと思います。カリフォルニアのベーカリーカフェって、街の色がとてもよく見えるんですね。オーナーがアートを飾ったりイベントを行ったりして、その街で活躍しているアーティストと出会うことができて、いろんな人が集まるコミュニティとしての場所になっています。Parkletもただの場所ではなく、すぐ隣の公園では毎日の天気を感じることができ、お客様が出入りするたびに世界観が変わります。僕たちは日本とカリフォルニア、どちらにもつながっているメンバーがやっているお店なので、アートである器も、振る舞いも、100%カリフォルニアのものを日本でやっても面白くない。日本でやる意味を考えて、両方をバランスよく取り入れています。

m ) 大切にしているのは「街の色」とありましたが、具体的な例があれば教えてください。

Max )サワードウブレッドを作る工程はストイックで、手間もかかるし拘らないと美味しくならない。さらに、一般的にわかりやすい味ではなく、どちらかというとマニアック。日本ではまだ馴染みがないので、僕たちだけが美味しいと思うものを「どうだ」と出しても、お客さまがそう感じなければ意味がないと思うんです。どうやって日本で受け入れられるかを考えた時に、ベーカリーだけではなくカフェメニューや、パンに合わせるものが必要だと思いました。ワインとチーズや自家製のピーナッツバターやジャム、美味しいアボカドトーストなど、いろんなメニューがあったらいいなと考えて今の形になりました。本場のサワードウブレッドを求めている人にとって、カリフォルニアのそれとは当然異なりますが、逆にここ(Parklet)だからこそ100%国産の小麦を使い、100%日本の空気が持っている酵母で作ったサワードウブレッドを体験していただきたい。お客様に斬新だな、感動したなと思っていただけると嬉しいです。店頭でお客様の好みをよく観察し、僕たちの理想+お客様が気に入ってくれそうな理想の形を考えてバランスをとろうとしたときに、その街の色が見えてくるように思います。1日1食のトーストを、Parkletでまた食べたいなと戻って来てもらえると嬉しいです。

photo: Max Houzager

m) お店のデザインやうつわもとても素敵です。

Max ) Parkletのディレクションは、個人的にも実験的な挑戦でした。「公園」がテーマなので、自然やユニバーサルデザインを意識し、「ここならでは」とそのエリアを感じられるもの、その空間に合うと思うものをイメージしました。子供用の遊具の色や、かわいらしい日本のキャラクターを世界観に盛り込んだり、故金さんの作品をはじめ自然を感じる作家の作品を店内に飾ったり。今まで故金さんの作品がカジュアルなベーカリーカフェに置かれているのを見たことがなかったのですが、ブランディングを組み立てる中で、こういった異なる属性やテイストのものを内装やレシピと組み合わせることに個人的にも非常に興味がありましたし、きっとうまくいくと思っていました。

m ) Maxさんにとって「日本らしい」とは?

Max ) いろいろな側面があるので、一概には言えませんが、今回のイベントのテーマであるうつわにつながる点を挙げると、自然との向き合い方には日本らしさがよく表れていると感じます。日本は歴史が長くて、自然に根気よく向き合っている国だと思います。型に則った創作が昔から続いている一方で、今までのやり方を大きくはみ出し新しいことをやろうとしている人たちがいるのも面白い。僕が育ったカリフォルニアと比べると、現在のカリフォルニアはわりと歴史が短くて多様な人が自由に生きている。けど日本と共通点もあって、自然に触れやすくて、自然が文化の欠かせない一部になっています。ただ全然違うのが、カリフォルニアだとプログレッシブな人の方が多くて、もっと昔からある技法を探ってる人は少数派です。そのバランスが日本とは逆になっているかもしれない。日本とカリフォルニアは、自然との向き合い方を大切にしている点を共通点として、歴史と文化に対して逆の要素があることによってお互いに興味を持ち合いやすく、実際に混ざり合うと良い影響を与え合うことができると思います。


photo: Ekaterina Izmestieva

<profile>
Max Houtzager(マックス ハウゼガ)
写真家・クリエイティブディレクター
東京とカリフォルニアを拠点とするクリエイティブ・ディレクター/フォトグラファー。多分野にわたる活動の中でも、自然と関わりのある写真や映像制作をずっと続けている。TerasuやTerrainの創設者で、クリエイティブ ディレクターでもある彼は、様々な媒体を用いて、多様なコミュニティー や周囲の建造環境と自然環境の相互作用について日々探究している。

Max Houtzager
Photographer / Creative Director
Max is a Tokyo and California based creative director and photographer. His work is interdisciplinary, but photography and filmmaking, particularly in nature, have always been a constant in his life. As founder and creative director of Terasu and Terrain, he is continuously exploring the interplay between communities, and their respective environments.

Parklet
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